物理学や化学など他の科学と違い、分子生物学が生まれてからまだ100年も経っていません。そして分子生物学の知見の工業利用であるバイオテクノロジーにいたっては、まだ発展の途上にあります。バイオテクノロジーが生まれた当初は、様々な夢が語られました。例えば、病気の原因を分子レベルで解明し難病治療に道筋を立てていくことや、生活の中で様々な体内の分子の活性を計って予防医学に役立てるなど。
分子レベルでの生命現象の解明はいまも進んでいます。研究室からは常に新しい知見が生まれてきており、いまもバイオテクノロジーは発展を続けています。ですが、バイオテクノロジーの発展のボトルネックになっている事実があります。きわめて当然ですが、人間は実験動物ではありません。もし新しいバイオ技術が生まれる可能性をもつ知見が得られても、その普遍性を人間で検証しない限り工業利用は難しいです。そして、その検証の実施のボトルネックになっているのは、検証のための情報の入手経路が限られた医療機関に限られるためではないでしょうか。情報の流量の少なさがバイオの発展を妨げ、バイオインフォマティクスの発展を阻害していると我々は考えます。
ですがもし、一般の方々が自ら健康情報を匿名で登録し、参加者全員を母集団とする統計情報を参加者が自由に参照できるポータルサイトを運用することができたらいかがでしょうか。医療関連産業をはじめ、食品やコンテンツ産業、レジャーやスポーツ関連産業などを巻き込みながら、あくまでもひとりひとりの参加者が主導権を持つコミュニティが形成できれば、と考えます。
我々は社外との連携を視野に入れ、専門家ではないふつうの人たちをバイオに巻き込んでいく努力を進めたいと考えております。 |